2009年03月31日

Angel

NICU(新生児集中治療室)で大切に可愛がられて育っていた子が、今朝旅立ちました。

600g弱の未熟児で生まれた彼女は、最初の危険を乗り越えたところから、なんだかよく分からない病気に苦しめられ続けてきました。
抱えている2つの問題のうち1つは、すごく特殊なミルクアレルギーだろうと分かったのですが、もう1つの原因は最後まで分かりませんでした。
そうならないで欲しい、というみんなの願いも届かず、今朝方、大きく泣いたあと静かに心臓が止まり、どんな薬にも反応せず、どんな呼びかけにも反応せず、10ヶ月と1日の生涯を閉じました。体重の増えない子でしたが、最後に体重を量ったら1622gとはじめて1600gを超えていました。

天使の腕の中でここから高く飛び立つ。

時々NICUに長く居座る子がいます。
大抵は大きな問題を抱えているために、NICUから外に(一般の小児病棟に)移れないわけですが、そしてそれがNICU不足に拍車をかけると問題になるのですが、えてしてこうした長期入院の子供たちは、病棟スタッフのアイドルになります。
ママとパパの代わりに愛情を注ぎ、世話をし、まさに「育てる」わけですから、そこに生まれる感情はビジネスライクなものよりも、両親・家族に近いものになるのでしょう。
こうした天使ちゃんたちは、時にはママよりもスタッフになついていたりして、それはそれで切ないのですが、一方どんなに愛情を注いでも、ママが面会に来ると、それまでの不安定な状態がいきなり落ち着いたりするあたりは、これもまた切ない。

そうやって愛情を注いだ子が大きくなって、問題を乗り越え、無事に巣立って行くのなら何よりなのですが、時には頑張って頑張って、頑張りきれなかった子もいるわけです。
それが突然であればあるほど、愛情を注いだスタッフの喪失感は両親と同様とても大きいのですが、実はもっと切ないのは、その涙の中で隣の子に笑顔を向けなくてはならない一瞬があることかもしれません。
家族と同じ痛みを抱えながら、家族と同じ様には悲しんでいられない心は、悲しみの処理をできずによりどころを求めてさ迷うのでした。

昔「研修医の涙」という一文を書いたことがあります。自分の心を守るために、いつでも一歩ひいたところに立っているはずが、時には醒めた距離を置ききれずにのめりこんでしまう受け持ちの子供がいるのも事実で、今朝のようにそんな子を失うと心が折れます。

それでも、暗く冷たい部屋から、終わりの無い恐れから、苦しみから、天使の腕に抱かれて天使が飛び立って行くのだ、と思えれば、少しは心がやすまるのですが。

「なにするのよ〜」とキョロっと主治医をにらむ顔や、あやしたときに見せる一瞬の笑顔を胸に、さぁ、僕も帰ろうかな。

posted by GO at 20:23 | Comment(2) | TrackBack(0) | 医療